2019年3月16日土曜日

韓国問題から垣間見られる日本の「尊厳や道徳」よりも「金の亡者体質」

 この原稿を書いている時点での既成のマスコミやユーチューブ(YT)からの発信において、韓国の「徴用工問題」(ここでは、「応募工問題」と正しく記する)の件で、「もし韓国が国家権力の発動として、日本の企業から賠償金として差し押さえなどで取りたてた場合に、日本からの経済制裁の発動をすべきだ」という声が大きくなりつつある。その一方で、「いや、そうすることは日本にも回りまわって大きい損害が出るので、止めた方がよい」という意見を述べる人たちがいる。
 私は、こういう情報を見るに、少なくとも二つの面で、現実的には日本が陥ってしまった経済第一主義を雄弁に示していることを知る。
 第一は、「応募工問題」という、主に韓国に進出している日本の企業が直接的な経営的な損害を受けるという事態に至って初めてこういう議論が政府関係者の中から出てきたということだ。既に、「慰安婦問題」「竹島問題」その他、多くの日本国を貶めたり侮辱したりする数多くの国家的行為を韓国は継続的に行ってきた(別号2019.03.03)。「竹島問題」は領土の問題であり、日本が普通の独立国であれば、軍事衝突が不可避の事態である程の重要案件だ(憲法九条があるから韓国は足元を見て竹島を事実上占拠している)。「慰安婦問題」も日本の尊厳をいわれもなく侮辱している案件であり、韓国に進出している企業の損害云々どころの話ではない。この時点から「制裁」の発動を検討しなければならなかったのではないか。YTではこういう意見が以前から数多く出ているのである。結局は、日本の国益などには無頓着な刹那の私益を求める日本の企業が直接被害を蒙るという事態にならないと、政府は本気で「制裁」を考えることをしなかったのだ(まだ制裁はしていない。考え出したということを述べている)。
 つまり、日本の尊厳に係る重要な問題よりも韓国に進出している企業の損害の方が上位問題であるという現実こそが、戦後のGHQが日本を二度と自立できないようにしようと日本国民を洗脳した(先ずは、エリート層の思想改変から始め、その後庶民に広めていった)ことが成功している惨めな現実を雄弁に示している。ただ、GHQもここまで日本が洗脳されるとは予想していなかった。日本人には、敢然と向かうことができる資質もあるが、際立って人の好いところ(国際関係的には「幼稚」・「未熟」)が共存しているのである。

 第二に、経済人や経済評論家などの日本に係る経済を熟知している人々の問題である。彼らの少なくない勢力は「韓国への経済制裁を行うと、日本への損害も予想以上に大きいのだ。否応にかかわらず、日韓は既に運命共同体になっているのである」というのである。例えば、元韓国ゼロックス会長の高杉暢也氏もそのように述べているらしい(文芸春秋4月号)。私は、損得の話に限ったらそういう点はあるだろうと思う。ただ、経済の損得がすべてなのか?という設問は高杉氏の思考のアルゴリズムには含まれていないに違いない。しかも、損得といってもせいぜい数年~十年くらいのことであろう。戦後の日本は本当の経済危機の時にこそ、必要に迫られてイノベーションが進んだという実績がある。為替で得をするとか労働力の安い国に出掛けて得をするというような、いかにも安易でかつ刹那的な愚策を選択した企業の責任者(あるいは株主)が自分で蒔いた種ではないか。そんなことで、日本の尊厳をまたまた貶めさせるのかと問いたい。経済評論家の方などが日本の経済を良く知っているといって、日本全体を知っているような偉そうなことを言うなと言いたい。ただ、ご本人はそのつもりはなかっても、周囲が専門家の意見としてこれが最上位の判断だなんて扱うのが問題なだけかもしれない。
 「日本は今やあの韓国と運命共同体である」という認識があれば、「これは大変拙いことである。早々にそういう事態から脱却するにはどういう対応をしようか」という話でなければならない。自分の付き合っている相手が暴力団員であったとか狂気の性格の人物であったということに気付いた時に(気付くのが遅すぎたことはここでは取り上げないとして)どうするのか? 運命共同体だからもう仕方ないだろうと言うのか? 否、「自分の今までの選択が悪かったので、しばらくは苦難が続いても、アイツとは絶縁するように努力しよう」が道徳的にもまともで現実的な選択であるはずだ。別号で既に議論したように、韓国だけとは向後半世紀はお付き合いを止めておくのが正しいことなのである。
 
「此の段になっても政府から経済制裁の一つも出動していないことの呆れた日本の現状」という論点で述べてきたが、これに係る日本人の精神的な問題点と、これに関連する日本列島の地理的および地政学的な認識について持論を述べておきたい。
 第一に、日本人の精神的問題点について。「右の頬をぶたれたら左の頬を出せ」とはキリスト教の教えにある。他にもいろいろあるとしても、この一言で、これを信じたり実践したりするキリスト教徒は「空恐ろしい」なあと僕は思う。広い意味の宗教心は僕はまあ積極的に肯定するのだが、宗教団体になった時点で構造上怪しい事柄が増えてくる。左翼イデオロギー団体と同根である。上記の教えなどには教団の何らかの魂胆が反映されていると思わなくてはならない。もともとの教祖の心理病理学的な狂気が反映されていることは言うまでもない。
それはさておき、「右の頬をぶたれたら痛いし、普通は腹が立つ」というのが正常の人間の生理的反応である。生理の赴くままに生きるというのも恥ずかしいことなので是としないが、スーパーエゴの指令に従って生理に反することをし続けるということは不健康そのものである。いずれかの時点で精神や肉体が破綻してしまう。三木清は「人生論ノート」の中で「世間一般の受け取り方と違って、感情は没個性的で理性こそは個性的」のような卓見を書いていた。つまり、「腹が立つ」ということは生理的で当たり前のことなのだ。度重なる韓国の仕打ちに「腹を立てるな。彼らの気持ちも理解してあげよ」という意見を垂れ流す人たちは破廉恥だと思う。スーパーエゴのバイブルに従って考えさせられて発言させられている似非文化人なのだ。
腹が立つのがまっとうな国のまっとうな人間の反応のはずだ。腹を立てさせられたことにどう対処しようかなということが以後の理性的な対応になる。ここからが肝要なのだ。アプリオリにケンカをしては絶対にいけないというのはイデオロギーに属する。何時もケンカするのは道徳的にも宜しくないが、時にはケンカ(喧嘩の振りでもよい)が妥当で賢明な結果をもたらすことになる。特に、国益というような重要な利権が関わってくるような事柄についてはそうなのだ。
翻って、我が国の戦後の外交について考えると、「アイツは絶対に仕返しをしてこない」という確信的な判断を他国に植え付け続けてきた。そう思わせることは自立した国がするべきことではない。そのように思わせることこそが国益を損ねている。特定のあるいは非特定の相手国を増長させて、さらなる国益の損害や圧迫を受けることにつながってきた。こういう事態を避けるために、時々は制裁を加えなくてはならない。少なくとも、現時点で遅まきながら経済制裁の第一弾くらいはしておかないといけない。その手始めに、在韓大使の引き上げくらいは継続的に実現しておかなくてはならない。

第二に、日本の地理的および地政学的な特徴について。日本列島はモンスーン気候の地域に存在して、南からの二つの暖流によって西南部分が挟まれている適当な広さを有している領土である。つまり、大体は温暖多湿である。それ故、海の幸も豊かであるのみならず、列島の植物は放っておいてもどんどん繁るのである。しかも、大陸と陸続きでないので、今までは他国からそう簡単に侵略されなかった。世界を見渡してもこんな楽園はあまりない。こういう状況が日本民族をして相対的に穏やかな性格に作り上げたのである。このことを、先ず、日本人はお天道さまに感謝しないといけない。これが望ましい宗教心であると私は思う。英国は日本に地政学上で似たところがあるが、気候的には日本と違って穏やかではない。地震・台風は別に議論しよう。
日本列島ではそう簡単に餓死しないのである。現代の日本人は精神が贅沢になり過ぎているので厄介であるが、突き詰めると、日本人は飢え死にしないのだ。将来、現代文明が地球規模で破綻しても、日本列島ではエネルギー摂取における自活は可能である。ただ、現在、日本の食物エネルギー資源について危機感を煽っている声が大きい。しかし、その前提は「生活様態やものの考え方が贅沢になり過ぎている今の日本人についての反省について無視している」ということなのである。欧州に海外旅行に行くと、日本人がいかに贅沢な生活をしてかについての実感が得られるはずだ。

ところが、将来の地球危機の時点でも餓死を免れさせうる列島は、今後はそうでない地域の民族から侵入・侵略される標的になるだろう。つまり、日本民族は餓死によって滅ぶのではなく、侵略によって滅ぶことになりうる。日本列島は究極的に想像すると以上のような位置にあるということが地理的および地政学的に本質的なことと思われる。
 ただ、この日本列島の地理的・地政学的な構図では、現在ならびに近未来の不都合に既になっているのが残念である。日本の最近隣には、朝鮮半島・支那(中国)・ロシアという面倒臭い国々がある。これらの3つの境界を接している国または地域を飛び越せば、圧倒的な数の概ね日本との友好国か少なくとも中立的な国ばかりである。偶然にしても運が悪すぎるというものだ(別号で述べているような、「実は、近隣だから面倒なことが生じる」という一般的なことではなくて、現在の最隣国そのものの政治体制や民族性に問題がある)。
また、現時点でも、偏西風に乗って、中国大陸や朝鮮半島から有害な物質を含む可能性のある空気が毎日降り注いでいるのである。日本国内でいくら環境改善をしてもザル法のようなのである。もし、大陸や半島の核施設に異常が生じれば、核汚染した空気は日本列島に降り注ぐのである。偏東風だったらよかったのにと以前から思っている。
こういう核問題を考えると、むしろ日本国内の各施設の方が蓋然的にずっと安心なので、日本国内の環境放射線量基準を含む種々の国際基準のしばしば十倍も厳しいという馬鹿な法律を作るのではなく、共産政権の中国や北朝鮮の経済を潤さなくする方針を堅持すべきであったのである。潤すと、結局は核施設や核兵器をどんどん作ってしまうのだ。
  ただ現在、世界制覇を目標にしていることを隠さないのは共産政権の中国だけである。ロシアはその方針は今や捨て去っている。朝鮮半島の国は国家を挙げての歴史捏造をし、道徳教育をないがしろにしてきたので、いまだに信じ難いほど民度が低く、戦後ずっと隣国の日本に「言いがかり」と「タカリ」を行ってきた。しかるに、自尊心だけが異常に強い。しかしながら、国力としての脅威は、我が国が憲法をまともにさえすれば、取るに足らないと思われる。
それ故、中国は放っておくと末恐ろしいから適切な対応をしなければならないので(最善は、今の全体主義国家を崩壊させるのが一番ではあるが・・・・・)、今の米国の方針に協調していかないといけない。日本ではいまだに親中政治家が幅を利かせているが、日本の国益のために彼らを無力化しないといけない。中国とは国民レベルでは仲良くできる余地は少なくないと思っている。朝鮮半島については、付き合わないという方針を堅持するという単純なことでよい。中国や朝鮮半島に進出している企業は撤退しないといけない。自業自得であるが、多少は政府が撤退に手助けをすることは許容できるかもしれない。ロシアについては、北方領土(これは日本固有の領土であることに違いがないが)のことで、変な妥協をしないことを第一とすべきだ(別号2019.02.19)。その上でロシアとは、是々非々で国民レベルでは仲良く付き合えばよい。
そして、米国と協調して台湾と国交回復して戦後レジームを変えないといけない。親日的な台湾に手を差し伸べないような日本は道徳的に恥ずかしい。贅沢や金や軍隊よりも道徳が大事である。ただ、道徳の遂行に寄与するという一種の国益のために金と軍隊を利用することは賢明で必要なことである。日本の国益のためには、なお長期間は世界最強の米国とは日米協調を堅持しないといけない。そして、日英関係の強化の路線が見えてきたことが非常に望ましい兆しだと私は思っている。

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